Story

第四話

~「奇術の可能性」~

ダイスラボ、No.1が何かを造っている。

No.1『ダメだ、また失敗だ』

No.2『何をしてる?』

No.1『忘れさせるマシンを作ってる』

No.2『忘れさせるマシン?』

No.1『この前見られたろ?幸いバレはしなかったが、危ない状況になった時に役に立つ』

No.2『なるほど、それでこれを散々見てたのか…』

そこにはMIBのDVDが置いてある

No.2『フッ、笑えるな、お前らしい。だが良く考えろ、目を瞑られたり、狙いを外したらダメだ、良く見てくださいと言っても前段階で怪しまれたら誰も見ないぞ』

No.1『ほう、お前ならどうする?』

No.2『人間が必ずする行動、呼吸を利用する』

No.1『なるほど、匂いか…だがそれも鼻を塞がれたら終わりだ』

No.2『嗅げと言ったら嗅がないだろう、だが目の前に何かが現れたら、反射的に目を閉じたとしても真っ先に呼吸を止めるやつはいない。匂いは見えないからな』

No.1『確かに、匂いか…俺の専門分野ではない』

No.2『面白いやつがいる、見に行くか?』

No.2が差し出したのはマジックショーの宣伝チラシ

No.1『手品?』

No.2『こいつはただの手品師じゃない。薬局経営者の跡継ぎだ。薬局はこいつのせいで傾いてる』

No.1『そんな厄介者はいらん』

No.2『何で傾いてるかって…』

No.2が焦らす、No.1は興味のないフリをしている

No.2『…片っ端から店の薬使って色んな薬を作ってしまうのさ』

No.1『ほう、色んな薬とは?』

No.2『まだ確認してないが、化学の知識には相当長けている。こいつなら忘れさせる薬何てものが作れるかもな』

No.1『確認出来てなければ本人に聞くまでだ』

No.2『…一つ言っておく、曲者だ、フフ』

場所は変わり、市内の小さな古い民家
ここを改装し小さな劇場にしている。

マジシャン『はいは~い!そらっ!』

観客『…』

マジシャンの手品はあまり評判の良いものではない

マジシャン『…では次はビックリ感動の手品ですよ!…そらっ!』

観客『あれ?何でだろ、涙出てくる』

観客『確かに感動する?』

観客の中には素顔でNo.1とNo.2がショーを見ている
二人は変わったサングラスをかけ、口をハンカチで押さえている

No.1『…フフフフ、面白い』

マジシャン『さぁこのカード、よく覚えてくださいね!さ、どれかな~?』

観客『これ!』

マジシャン『よっ!っと…さぁどうだ!』

観客『おお!流石だ!』

マジシャン『どうもありがとうございました~!』

観客『あまり面白いってほどじゃないけど、白河ではこんなもんか』

マジシャン『…』

観客『あれ、アッハハハハ!』

観客『お前面白がってるじゃん!』

マジシャン『またお越しを~!』

人気がなくなると二人が動き出す

No.1『おい!』

マジシャン『え!?』

No.1『何をした?』

マジシャン『何が?僕は何もしてない』

No.2『フッ、我々の目はごまかせない』

マジシャン『あれ?君は…見たことあるような…?』

No.1『どうやって作った?まさか交渉の前から見れるとはな…』

手元の機械を見ている
成分を分析する機械のよう
全てをわかっているような口調で問い詰める

マジシャン『何を?』

No.1『何秒だ?』

マジシャン『え?え、何が?』

No.2『何秒泣かせ、何秒忘れさせ、何秒笑わせられるのかと聞いている』

マジシャン『知らない!何の事だ』

No.2『お前はいけない実験をしてる』

マジシャン『え?…』

マジシャンは何かに気がつく、傾きかけた薬局を立て直しにきているコンサルの男、全てを見られていた

マジシャン『君は!勘弁してくれ、黙っててくれ』

No.1『そうだな、そんなのバレたら大変だ…(No.2、間違いない、薬だ)』

No.2『(マジックに利用するにはもってこいか)…おい、もう二度と楽しい実験が出来なくなるぞ』

マジシャン『実験…う、ううん』

No.1『その力を俺たちに貸せ』

マジシャン『あ!ほら来た!絶対来ると思ってた!あんたらは何とかって秘密組織でこう言うのを使って世界征服を企んでるんだ!』

No.2『ん?』

No.1はマジシャンの性格を察し、それに合わせる

No.1『そこそこ当たってるが、それをなぜ知ってる?』

マジシャン『テレビや映画では、化学を利用して悪いやつらが人を殺したりするんだ!』

No.1『フハハハハ!面白い!』

No.2もようやくそっちの世界を認識する

No.2『我々はそう言う組織とはちょっと違う』

No.1『俺達は俺達の理想の社会を作る、それだけだ』

マジシャン『それは何をするんだ?』

No.1は一通りの計画を話す、それはマジシャンにとって聞きやすいように

マジシャン『そうか、でも僕はやらない』

No.1『仕方がないな、じゃあ今日はこの辺で』

No.1はあっさりと退散する

No.2『良いのか?お前にしちゃ珍しい』

No.1『ああいう奴にはいきなり食いついても無駄だ、今日は怪しまれてる。明日別の方法を試す』

次の日…またも二人はマジックショーの会場にいる
ショー終演後…

マジシャン『また来たの?ネタバレするからやめてよ!』

No.1『考えてくれたか?』

マジシャン『だからやらない!いいから帰ってよ!』

No.2『あんたの素晴らしい考えに魅せられたのさ、この男は』

マジシャン『え?』

No.1『そうだ、我々平和を目指す集団にこそ化学は相応しい』

マジシャン『え?平和?』

No.1『そうだ!あんたの化学の知識を平和に生かそう!眠れない人を眠らせ、悲しい人を笑わせよう!どうだ?』

No.1が話したことは正にマジシャンの目指すところだった

マジシャン『え?え?』

No.2『俺達は悪い集団じゃない、平和に利用するなら実験場所を提供しよう』

No.1『これならいくらやっても何も言われない』

マジシャン『僕の事を悪い事に利用するだろ?』

No.1『するわけないだろ』

No.2『俺達はこの世を変えるんだ、人々にわからせるのだ』

マジシャン『僕の化学を人殺しの道具に使わないなら…考える』

No.1『使わない、我々は殺生は好まん』

マジシャンが悩んでいる
楽しいことだけを考えていたい
いつも薬局に来る、患いを抱えた人々に少しでも笑顔を
そう思っていた
マジックも薬が出てくるまでに楽しんでもらおうと考えたのが始まりだった

No.1『お前は特技を生かせば良い、一緒に平和を作ろう…嫌なことを忘れさせる、そんな存在になれ』

マジシャン『…』

No.2『どうだ、来ないか?』

マジシャン『…わかった、僕で役に立てるなら』

No.2『なら一緒についてこい』

コンサルの男は車からバックを取り出す

No.2『あんたにピッタリのピエロの仮面をプレゼントしよう』

No.1『これは我らの象徴。今日からコードネームNo.4だ、着けろ』