Story

第六話

~「馬鹿と天才の境界」~

男『おい、お前!』

No.5『なんだよ?』

男『なんだよじゃないだろ!お前のせいで生産ラインが崩れるだろ、ちゃんとしろ!』

No.5が勤めているのは電子機器で使われる精密基盤の製造工場

No.5『え、何が?』

男『見ろ、前と同じ事してるだろ!』

No.5『ちゃんとしてるよ』

男『昨日、コスト見直しのために工程が変わっただろ!』

No.5『わかんないなぁ』

男『なんだ貴様、俺の図面がわからないとでも言うのか?』

No.5『いや、そういうわけじゃ…』

男『俺のおかげでここにいられると言うことを忘れるな』

No.5『わかった』

男『会社では敬語を使え』

No.5『わかりました』

男『ここでの失敗は親父さんの顔にも泥をぬる、覚えとけ』

男とNo.5は古くからの御近所付き合い
歳は離れているが小さい頃はいつも遊んでもらっていた
二人とも社会人になった今、No.5の不甲斐なさにイライラがたまっているよう

ピピピピ!
携帯電話が鳴り出す
メールを受信したようだ

No.5『うわっ!』

男『携帯は切っとけ!』

No.5『はい…』

(今日の9時に集まりがある、迎えに行くから家の前で待てNo.4)

No.5『…了解』

工場での一日が終わり
その日の夜
No.4が車で迎えに来る

No.4『やぁ待たせたね、行こうか!君を紹介するよ!』

No.5『ああ、頼む』

No.4『さぁ乗って』

車に揺られながら向かうと、そこは繁華街の隣にある
“昔の”繁華街
今は店の店主達も年老い、跡継ぎ達は都会へ出てしまっている
隣に次々オープンした新しい店に押され既に活気を失っている

No.5『ここはどこだ?』

No.4『あまり来ないでしょ?昔は栄えた場所だけど、市内の中心は移動してしまったからね~、僕が小さい頃はこっちで遊んでたのさ』

No.5『へぇ~』

No.4『忘れ去られた場所かな』

No.5『こんなとこでパーティーとかやるのか?』

No.4『パーティーではないよ、木を隠すには森の中って言うだろ?』

No.5『え?どの木だかわかんなくなっちゃうじゃん?』

No.4『…うちのリーダーは木を隠すには樹海だって…まぁあの、死んだ場所には誰も寄り付かないって事さ、年寄りばかりだしね』

No.5『つまり、騒いでも迷惑にならないと?』

No.4『……まぁ僕の世代では秘密結社って言った方が馴染み深いかな?』

そもそもNo.4もよくわかっておらず、No.1は面倒になり樹海の話をしたのだ

No.5『ふ~ん』

No.4『…着いたよ!』

そこは今、誰も使用していないスナックの跡地
経営者は夜逃げし、取り壊しの責任も何もない、誰も無関心の手付かずの場所

No.4『入って』

No.5『ああ…ここ人いるのか?』

No.4『大丈夫だよ!見てて』

No.4が壁の一部を押すと柱が開く
柱には数字のキーが並んでいる

No.4『********っと』

すると床が開き階段が現れ使われなくなった用水路に出る
そこから壁づたいに歩くと
また壁を開け指紋認証を行う
扉が開き、ようやく到着
ここは戦時中塹壕として使われた洞穴
市は立ち入り禁止にし、街では幽霊の噂話
誰も寄り付かない場所
ダイスの隠れ家はここだけではない

No.1『待っていたぞ、俺の勝ちか?』

No.2『使えなければ俺の勝ちだ』

No.1『君が命を救った男か?ようこそ』

No.5『あ、ああいえいえ、もうこれ付けた方が良いのか?』

No.4『ああ、そうだね』

No.2『待て、まだ認めたわけじゃない、…君は何が出来る?』

No.5『何がって、何が?』

No.1『フハハハハ!面白い!肝が座ってる』

No.2『○○電子、と言う事は担当は組み立てか何かか?』

No.5『よく知ってるな』

No.2『フ、バイトに出来ることなど限られてるだろ』

No.2がNo.1を呼び、少し離れる

No.2『駄目だ、使えなさそうだ・・』

No.1『そうだな…だが、わからんぞ』

No.1は自分の書いたテスト用紙をNo.5に見せる

No.1『なぁ、これが何の設計図かわかるか?』

No.5『う~ん、どれどれ?』

No.1『3日やる、何だか当てる事が出来たらダイスに加えてやろう』

No.5『え?会員になるにはテストがあるのか、わかった』

No.1『会員?…なかなか面白い…』

No.2がNo.1に耳打ちする
No.5はNo.4に送られ帰路に

No.2『諦めろ、俺たちに必要な人材ではない』

No.1『まぁそうだろうな、わかる訳が無い』

No.2『知ってて渡したのか…フッ』

また新たなメンバーを探そうとダイスが動き出す…

次の日の昼、工場の休み時間
No.5は設計図の解読に必死だった

No.5『う~ん、何だろこれ?こんなの組み立てられない、う~ん…』

男『おい!お前何してる、仕事しろ!』

No.5『え、ああすまない、でも時間がない』

男『何がだ?』

No.5『テストの』

男『資格でも取る気か?仕方ない、昔っからこうだお前は! …どれ?……』

男は設計図を解読した
恐らくこの街ではこの男以外には解読出来ないであろう
シンプルな機材で通常の技術では考えられない発想を使用した技術、組み立てても動く確証すらない
だがこれが出来れば正に夢のような機器が仕上がるのだ

男『……なんだこれは?……お前!どこでこれを!?』