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転んでも起き上がる丸い達磨と転がすものだけど四角くて転がらないサイコロ。 天才集団はいつも知恵を使い攻めてくる、達磨は時には努力を時には工夫を! 必殺技なんて無い その場で考え臨機応変に戦う。いかに相手を転がしあうか、それが達磨とサイコロの戦いである。
私達が伝えたいことは、努力と工夫とだるまのように転んでも起き上がる諦めない気持ち。 まずは自分達が技を磨きヒーローになれるよう努力し体現する。 それを見た子供たちが頑張ってくれる事で、自分達には出来ない街の活性化を目指したい。 私達には時間が限られている、だから街を愛し育てる事の出来る子供達が、たくさん成長してくれることを願い日夜活動する。
転んでも起き上がる丸い達磨と転がすものだけど四角くて転がらないサイコロ。 天才集団はいつも知恵を使い攻めてくる、達磨は時には努力を時には工夫を! 必殺技なんて無い その場で考え臨機応変に戦う。いかに相手を転がしあうか、それが達磨とサイコロの戦いなのだ。
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ダルライザー転んでも起き上がるダルマをモチーフにし、起き上がる(ライズ)をプラスした名前を持つダルライザー。 |
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ダイス No.1両極端な人生を歩み自我が崩壊し堕ちた天才。 |
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ダイス No.2冷静沈着なダイスの作戦参謀。 |
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ダイス No.3ダイスの天才ドライバー。 |
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ダイス No.4化学の天才?マジシャン。 |
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ダイス No.5何も持たない天才。 |
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ダイス No.6誇り高き天才。 家業に見切りをつけ、自身は電子工学専門企業で働くNo.6。 |
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アスラダイス(仲間)と死闘を“演じる”ことによりまるでヒーローが現れたと錯覚させ子供達の視線をダルライザーから反らす。 |
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バジオウ青年はダイスのサイコスナッチャーによる人の洗脳計画の情報を少しずつ得ながら機会を伺っていた。サイコスナッチャーは人の精神を抜き取り封じるマシン。未完成の状態で開発中だったが設計図を奪い完成させる。 |
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ラゴウ5thのバジオウの三番目の人格3rdの別名。 |
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八起なな子ダルライザーとはショーがきっかけで出会った、いつもの司会のお姉さん。 |
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ダルライザースノウ生身の人間であるダルライザーが寒い白河で冬場戦うために自ら作った防寒着を着用した姿。 |
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ダルライザーライディングダルライザーがバイクに乗る時のコスチューム。 |
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~プロローグ - 堕ちた天才~
大手メーカー開発部に勤務していた過去を持つ後にダイスNo.1となる人物。
会社にも期待された人材で、入社後8ヶ月で会社の命運を左右する、あるプロジェクトが発表される。だがそれは彼が以前同僚に話していた計画そのものだった。
男『あれは、自分が描いていた画期的な技術です!自分でなければ出来ません!』
上司『いかんよ君、よくいるんだ昇進願望が強く、直接君のように自分から言ってくる人間が。ほら、企画書もきちんと彼がまとめたものだ』
男『そんな、これは私の話した夢そのもの!…』
上司『期待された人間ほど、応えようと言う気持ちはわかる。だが人のものまで取ろうとしちゃいけない。まぁ、また次があるさ。』
事情を話し、自分にリーダーをやらせて欲しいと言ったが、プロジェクトリーダーは同僚に決まり、それが成功し同僚は一気に昇格する。
この訴えがいけなかったのか、上司に直訴したことは瞬く間に社内に広がった。それにより交際していた同じ社内の女性も愛想を尽かし、その同僚と交際が始まったのを知ったのはそんなに日が経たないうちだった。
社会は甘くないと思ったと同時に人間不信に陥り、ひたすらに自分の仕事と次なるアイディアを生もうと必死になった。
今までは華やかな人生であった、スポーツ万能で博学、それら全ては努力の賜物と言うくらい努力家。皆の憧れだった男はたった一つ歯車が外れ、運命は密かに逆転する。
2年も過ぎると会社で聞こえるのは、
『期待していたのに』
『役に立たない』
等の声。唯一の発散の場は地元白河に住む両親との電話だけだった。
『大丈夫だよ、何も心配するな次はうまくいく』
いつもこう言っていた男はある時を境に、
『ダメだ、俺には何も出来ない…どうしたらいい?』
とこぼすようになる。
仕事に悩む息子をほっとけなかった両親は帰郷を促す。悔しい思いもあったが心機一転、家業を継いで頑張ろうと思った。
全てを精算し、家業を継いだ後、待ち受けていたのは社会だった。家は温泉旅館だったがある事件をきっかけに泉質が見直され温泉と名乗れなくなってから客足はめっきり減った。No.2との出会いはここからだった。
同級生であり経営コンサルタントのNo.2。危機に陥っていた温泉を救おうとリサーチに来た。
『久しぶりだな』
男『まさか、お前がそんな職をしてるなんて、噂で聞くくらいだ、さぞ敏腕なんだろ?』
『ああ、任せておけ。と言っても他力本願はいかんぞ、お前が出来ることをしなきゃならない。さて、色々と聞かせてもらおう』
No.1の経歴を生かし、他にはない温泉を作ろうと言うコンセプトで変わった電気サウナやお湯を科学変化させる装置など、投資にはかなりかかったが結果は出た。
以前のように忙しい毎日。客足は戻ったがそれは長く続かなかった。
不景気で自宅生活の楽しみ方や家ご飯を促すマスコミ。自分ではどうにもならない状況だった。経営はだんだん悪化し借金取りが来るようになる。
借金取り『おい!返済はまだか!ああ?まだあと900万残ってるぞ!』
男『すみません!そんなすぐには返せません!少しずつ返しますから!』
借金取り『おら!持ってんだろ?3万か、利息にしかならねぇがこれはもらっとく。』
男『利息?返しても返してもいつもそれじゃないか!!』
借金取り『うるせぇ!!返せねぇ奴が何をほざく!次はいつ返せるんだ?働きに出てんだろ?』
男『…10日待ってください…』
借金取り『10日ぁ?おいおい、そんなにお人好しだと思うなよ。』
おもむろにポケットに手を入れる。
借金取り『あ、良いこと思い付いた!このサイコロで決めるか?あ?…残念ながら10って数字はねぇ!ははははは!!ほら!二だ!二日後に来るからな!』
そんな日々が続くうち両親は心労で倒れてしまう。入院費用もままならず、自己破産の選択しかなかった。No.2はそれを自分のせいだと謝ったがNo.1の口から出た言葉は違うものだった。
男『お前は悪くない、見ろ楽園都市計画、これを一緒にやろう。社会は甘くなかった、ずるくなければ勝てない、コントロールしなければコントロールされる。俺とお前で住みやすい社会を作ろう、その前にいらないものを排除する。俺と同じ苦しみを気分を味わわせてやる。』
淡々と話す男にはかつての覇気はなく、別の執念が燃え上がっていた。計画は凄まじい物だった。
情報経路の改革から人びとの意識コントロール。
社会からの独立と自らの支配。
全てが自分の人生を破壊した者達への復讐。そして社会変革だった。
社会に対し、不満を持っていたNo.2は復讐はともかく、統治による変革には賛同した。
そして計画を遂行するには人手が必要だった。
経営コンサルであるNo.2がその手腕を生かし他に自分達に必要な人材を上げた。
・技術者1名
・化学者1名
・ドライバー
・戦闘技術に長ける者
そして集団名は借金取りが次に来る日を決めていたサイコロを見て、
『フハハハハ!!これだ!これが良い!!今度は俺たちが世の中を回す!!フハハハハ!!』
それを復讐の狼煙としダイスが動き出す。
屈辱の現実と理想の楽園
プロローグでのNo.1とNo.2の計画の会話
No.1『俺と一緒にやらないか』
No.2『楽園都市計画?』
No.1『誰がこんな世の中にした?真面目な奴がバカを見るなど』
No.2『文明崩壊、再構築?リセット?』
No.1『俺に出来るかわからない、だがこれを一つ一つ達成していけば、世の中は良くなる。戦争をせずに破壊するには経済、精神、情報を支配する!それだけではない、積み重ねが重要なのだ。俺の計画だけでは俺の理想にすぎない、力を貸してくれ』
No.2『こんな事が本当に出来るとでも?』
No.1『だから頼んでいる』
No.2『・・・』
No.1『俺たちの将来を良いものに変えよう』
No.2『復讐か?』
No.1『そうだ、努力もせずにのさばる連中に裁きを!』
No.2『すまない』
No.1『…ダメか…』
No.2『いや、お前にそんな思いをさせてしまった、俺の判断ミスだ』
No.1『いや、気にするな原因はそれではない』
No.2『…』
No.1『原因を正すのだ、バカでずるい奴らばかりが頂点にいるから、いつまでも良くならんのだ。俺たちが世の中をコントロールする!』
No.2『…わかった、こんな仕事をしているせいか、お前と同じような奴らを沢山見てきた。考えには同意する』
No.1『つき合わせてすまんな、相談に乗ってくれるだけでも構わない』
No.2『計画を実行したら後には引けないな』
No.1『考えてある、これを』
仮面を取り出す、誰かわからないよう表情もない、ただの冷たい仮面
No.2『何だこれは?』
No.1『変声機が付いてる』
No.2『正体を隠せと?』
No.1『そうだ、せめてもの対策だ、何かあれば俺だけ捕まれば良い』
No.2『だから同じデザインなのか?』
No.1『そうだ、一人に見えるだろう』
No.2『…この計画の人員は?』
No.1『2人じゃ無理だとはわかってる、10人くらいのチームが欲しい』
No.2『10人か、もっと効率的に動ける少人数の方が良い、お前の計画は体より頭を使うからな』
No.1『そうか』
No.2『少し考えてみよう』
数日後
No.2『案がまとまった』
No.1『流石だな』
No.2『俺たちは人間だ、食っていけなければ何も出来ない』
No.1『収入の話か?』
No.2『収入と消費のバランスだ、10人では俺たちが潰れる』
No.1『確かに、今はまともな仕事もない』
No.2『俺の考えだが絶妙なバランスは6人』
No.1『ほう…6人?』
No.2『移動、格闘術、お前の知恵の補佐と技術の補佐、後は今後はエネルギー産業に目が向く。これに精通した人間が欲しい収入や製造に役に立つ』
No.1『なるほど』
No.2『知恵の補佐は俺がしよう』
No.1『頼む』
No.2『探してメンバーが揃うまでは実行しない方が良い』
No.1『わかった・・・6人か・・・』
No.1『クックック・・・』
No.2『どうした?』
No.1『6と言う数字を聞いて体が震えだした・・・あいつら・・・あいつら!』
ずっと冷静に自分を抑え込んでいたが恐怖を思いだし、まるで交互に別の人間が話すようだった。
No.2『なんだ!?』
No.1『借金取りの奴ら、俺が払えない事を知りながら賽を振ってやがった!』
No.2『何のために?』
No.1『次に来る日を決めるんだよ、10日待ってくれと言っても、最大で6日しか待ってもらえない…あいつらのせいで親父たちは参っちまった…許せん…』
No.2『トラウマなら5人とかでも良いんだぞ?』
No.1『いや構わない、俺を恐怖に陥れた奴らに同じ物を使って恐怖を味わわせてやる!・・・そうだ、6人集めて俺たちが賽になる、奴らみたいな下衆の人生を俺たちが決める!』
No.2『…』
No.1『ダイスだ…』
No.2『ダイス?』
No.1『俺たちのチーム名だ。世の中は俺たちの行動によって決まるクククク・・・』
No.2『・・・フ、良い案がある』
No.1『なんだ?』
丸く切った紙を仮面に添える
No.2『どうだ?賽の目に見えるか?』
No.1『ああ、面白い、だがカモフラージュにならん』
No.2『俺は構わん、やる以上は同じ覚悟だ』
No.1『ならばこれでいこう』
No.2『待て、お前は赤だ』
No.1『赤?』
No.2『賽の目の一つは赤だろ?』
No.1『ああそうか』
No.2『お互いのコードネームはNo.1とNo.2でどうだ?』
No.1『わかりやすいな』
No.2『なら他の面を探そう、ただし秀才でも有名なやつではダメだ、そこから足がつく無名な奴らが良い』
No.1『なるほど』
No.2『じゃあいこうかダイスを探しに』
策士の罠
ある家庭の日常
妻『今月もあとこれだけか~』
男『すまねぇな、日雇いでも探してくるか』
妻『私も働けば良いんだけど、もうちょっと子供たちが大きくならないとね~』
男『わりぃな』
妻『自営って大変ね』
男『会社務めの方が楽だったかな?余計な野望だった…とりあえず公園で遊ばせてくる』
男は現在トラックの運転手。
勉強より車やバイク、レースなどに興味をもち20代を過ごした人物。
現在二児の父、応用のきかない自分の人生に少し後悔しつつ子供を公園に連れていく。
子供『父ちゃん!』
男は考えにふけっていた。自分の人生を変えようと就職したものの、慣れない集団生活に嫌気がさし退職をした。
子供の声は届いていない。
子供『父ちゃん!ねぇってば!ねぇ!』
男『はっ!』
子供『なんで聞こえないの?』
男『ああ、悪かった』
子供『飛行機作って!』
男『ああ、良いぞ、貸せ』
男の受け取った紙には、
『経営にお悩みの方ご相談ください、必ずや復活させます!』
と書いてある。
男『経営コンサルティング?…これどこにあった?』
子供『落ちてた!作って~!』
男『…あ、あ~…わかった、待ってろ作ってやる!』
子供『まだ~?』
男『ほら、出来た!』
子供『わ~い!やってやって!』
男『ほらっ!』
子供『あはははは!』
男『シワだらけだったけど思ったより飛ぶなぁ!』
子供『わーい!』
男はしわくちゃの紙で作った飛行機の飛ぶ姿に運命を感じていた。
ボロボロでも飛べる。
まだやれると。
子供『あはは!もう一回!』
男『よし!』
家に帰ると男はコンサルティング事務所に真っ先に電話をした。
男『もしもし、ちょっと相談にのってほしいんだが』
No.2『それでは明日3時からでいかがでしょうか?』
翌日、男は自身の全てを話していた。
No.2『なるほど、これでは厳しいですね』
男『収入は得てるつもりだが』
コンサルタントの男は駄目な所を指摘する。
No.2『…とりあえず判断するには数字だけでなく、あなたを知る必要がある、ちょっと仕事を見せてもらいましょうか、ちょっと隣に乗せてください。』
指示を受けるまま走る道は狭かったり、山道だったり、わざわざ難しい面倒な場所を通っていた。
まるで何かのテストのよう。
No.2『なるほど、中々の腕前、あんな細い道こんなトラックで通れるとは、しかもスピード…違反になりますよ』
男『…趣味でライセンス持ってて…』
No.2『そうですか…合格!』
男『え、何が?』
No.2『いえ、何でもありません、素晴らしいお仕事振りです、良かったら私の上司に会っていただけませんか?』
男『上司?仕事をくれるのか?』
No.2『そうですねぇ、話が合えば。そこ右に行ってください…ちょっと待っててもらえますか』
男『ああ』
No.2『もしもし、今から行きます』
またしても案内される場所は賑わいのなくなった飲み屋街、コンサルティングの男のイメージとはかけ離れている
No.2『ではそこを入って行ってください』
男『こんなトコに会社があるのか?』
No.2『言わば本社です』
男『ここか?』
No.2『ええ、どうぞ』
見たことのない施設、入り口はドアではない。
明らかに怪しげだが、中はシンプル。
整った精鋭の企業のようにも見える。
奥から男が現れる。
No.1『どうも、どうも、よくぞ相談してくれました』
男『ああ、どうも』
No.1『さぞ困ってたんでしょう、素晴らしい腕前だとNo.2からお聞きしました』
男『え、何が?・・・』
男は異様な雰囲気を感じていた。社長らしき人物はコンサルティングの男をNo.2と呼ぶ。
No.1『我々もあなたと同じ、世知辛い世の中を味わった同志。そんな人々を救いたいとコンサルティングをしております』
No.2『どうぞ、座って』
男『ああ、はい』
No.1『これからNo.2がどうしてあなたの生活が苦しいか、ご説明します』
コンサルタントの男は世の中の仕組みについて語った。
全ては自分達に有利に運ぶように。
この男に復讐心を生み、自分達の仲間として受け入れるために。
男『そうか、そりゃ許せねぇな』
No.2『我々と一緒に世の中を変えませんか?あなたの腕が欲しい』
男『どんな仕事だ?』
No.2『悪をこの世から一掃するために我々が世の中を刺激するんです』
男『悪?』
No.2『我々の血と汗を無駄にする奴らに制裁を加えるのです』
男『…許せねぇが、そんなの良くないんじゃないか?』
No.2『あくまで間接的に、絶妙なラインを攻めるのです。刺激です。ライン攻めは得意分野では?』
男『…』
男は今一つ踏み込めないでいる。
No.1『ちょっと良いですか、これは我々の生活に平和をもたらします』
No.2『私たちは世の中を正しい方向に向けるのです』
男『平和?正しい方向・・・』
No.1『不安を感じていらっしゃる?考え方を変えるのです。今まで生きてきて不満を感じたことはありませんか?あなたは自分の利益ですら飯が食えず困ってる』
No.2『ところが、自分で働きもせずに食える人間もいる』
男『…』
No.1『私たちは間違っていることを正すだけ』
男『…これで子供たちは笑えるのか?』
No.2『きっと』
No.1『一度に沢山話しすぎました、今日は送って差し上げなさい』
No.2『そうですね、行きますか』
男『あんたらを手伝えば、それで飯が食えるのか?』
No.2『もちろん、事がうまく運べば今より良い生活が送れるでしょう』
男『平和になるんだな?』
No.1『ええ、我々と我々の周りのものは』
男『・・・そうか』
No.2『きっとお子さん方も楽しめる楽園です』
No.1『自分達の未来は、自分達で作るのです、我々で!』
そう言うと上司の男は部屋を出ていく、決断を冷静に出来るように。
男は悩んだが、どのみち上手くいかない人生、どこかで自分のギアを戻そうとしていた。
男『・・・なら、やろう』
No.2『ありがとう、あなたで3人目です』
男『え?そうだったのか、もっと社員いるのかと思った』
No.2『まだ出来たての集団でして、仲間を探しているのです、あなたのように困っている強力な仲間を』
男『はは、そりゃ光栄だな…』
No.2『先程上司と言いましたが正確にはチームのリーダー。コードネームNo.1です』
男『だからか』
No.2『そう私がNo.2。そしてあなたが3番目、コードネームNo.3』
コンサルタントの男は銀色に輝くマスクを取り出す。
男『これは?』
No.2『これは我々の象徴、そしてあなたを守る物』
男『正体を隠せと?』
No.2『そう、ご家族にはうまく伝えた方が良い、トラックも売った方が良い、それでしばらく食えるでしょう、我々のドライバー以外の仕事も斡旋しますよ。我々の仕事は普通じゃない、覚悟を決めてマスクを取りなさい。』
男はマスクを受け取った、全ては家族のために。
男『…』
No.2『これからよろしくNo.3、ようこそダイスへ』
男はコンサルタントの男と同じように仮面を身に付ける。
No.3『おう!決めたらやるぜ!何でも言ってくれ!』
~「奇術の可能性」~
ダイスラボ、No.1が何かを造っている。
No.1『ダメだ、また失敗だ』
No.2『何をしてる?』
No.1『忘れさせるマシンを作ってる』
No.2『忘れさせるマシン?』
No.1『この前見られたろ?幸いバレはしなかったが、危ない状況になった時に役に立つ』
No.2『なるほど、それでこれを散々見てたのか…』
そこにはMIBのDVDが置いてある
No.2『フッ、笑えるな、お前らしい。だが良く考えろ、目を瞑られたり、狙いを外したらダメだ、良く見てくださいと言っても前段階で怪しまれたら誰も見ないぞ』
No.1『ほう、お前ならどうする?』
No.2『人間が必ずする行動、呼吸を利用する』
No.1『なるほど、匂いか…だがそれも鼻を塞がれたら終わりだ』
No.2『嗅げと言ったら嗅がないだろう、だが目の前に何かが現れたら、反射的に目を閉じたとしても真っ先に呼吸を止めるやつはいない。匂いは見えないからな』
No.1『確かに、匂いか…俺の専門分野ではない』
No.2『面白いやつがいる、見に行くか?』
No.2が差し出したのはマジックショーの宣伝チラシ
No.1『手品?』
No.2『こいつはただの手品師じゃない。薬局経営者の跡継ぎだ。薬局はこいつのせいで傾いてる』
No.1『そんな厄介者はいらん』
No.2『何で傾いてるかって…』
No.2が焦らす、No.1は興味のないフリをしている
No.2『…片っ端から店の薬使って色んな薬を作ってしまうのさ』
No.1『ほう、色んな薬とは?』
No.2『まだ確認してないが、化学の知識には相当長けている。こいつなら忘れさせる薬何てものが作れるかもな』
No.1『確認出来てなければ本人に聞くまでだ』
No.2『…一つ言っておく、曲者だ、フフ』
場所は変わり、市内の小さな古い民家
ここを改装し小さな劇場にしている。
マジシャン『はいは~い!そらっ!』
観客『…』
マジシャンの手品はあまり評判の良いものではない
マジシャン『…では次はビックリ感動の手品ですよ!…そらっ!』
観客『あれ?何でだろ、涙出てくる』
観客『確かに感動する?』
観客の中には素顔でNo.1とNo.2がショーを見ている
二人は変わったサングラスをかけ、口をハンカチで押さえている
No.1『…フフフフ、面白い』
マジシャン『さぁこのカード、よく覚えてくださいね!さ、どれかな~?』
観客『これ!』
マジシャン『よっ!っと…さぁどうだ!』
観客『おお!流石だ!』
マジシャン『どうもありがとうございました~!』
観客『あまり面白いってほどじゃないけど、白河ではこんなもんか』
マジシャン『…』
観客『あれ、アッハハハハ!』
観客『お前面白がってるじゃん!』
マジシャン『またお越しを~!』
人気がなくなると二人が動き出す
No.1『おい!』
マジシャン『え!?』
No.1『何をした?』
マジシャン『何が?僕は何もしてない』
No.2『フッ、我々の目はごまかせない』
マジシャン『あれ?君は…見たことあるような…?』
No.1『どうやって作った?まさか交渉の前から見れるとはな…』
手元の機械を見ている
成分を分析する機械のよう
全てをわかっているような口調で問い詰める
マジシャン『何を?』
No.1『何秒だ?』
マジシャン『え?え、何が?』
No.2『何秒泣かせ、何秒忘れさせ、何秒笑わせられるのかと聞いている』
マジシャン『知らない!何の事だ』
No.2『お前はいけない実験をしてる』
マジシャン『え?…』
マジシャンは何かに気がつく、傾きかけた薬局を立て直しにきているコンサルの男、全てを見られていた
マジシャン『君は!勘弁してくれ、黙っててくれ』
No.1『そうだな、そんなのバレたら大変だ…(No.2、間違いない、薬だ)』
No.2『(マジックに利用するにはもってこいか)…おい、もう二度と楽しい実験が出来なくなるぞ』
マジシャン『実験…う、ううん』
No.1『その力を俺たちに貸せ』
マジシャン『あ!ほら来た!絶対来ると思ってた!あんたらは何とかって秘密組織でこう言うのを使って世界征服を企んでるんだ!』
No.2『ん?』
No.1はマジシャンの性格を察し、それに合わせる
No.1『そこそこ当たってるが、それをなぜ知ってる?』
マジシャン『テレビや映画では、化学を利用して悪いやつらが人を殺したりするんだ!』
No.1『フハハハハ!面白い!』
No.2もようやくそっちの世界を認識する
No.2『我々はそう言う組織とはちょっと違う』
No.1『俺達は俺達の理想の社会を作る、それだけだ』
マジシャン『それは何をするんだ?』
No.1は一通りの計画を話す、それはマジシャンにとって聞きやすいように
マジシャン『そうか、でも僕はやらない』
No.1『仕方がないな、じゃあ今日はこの辺で』
No.1はあっさりと退散する
No.2『良いのか?お前にしちゃ珍しい』
No.1『ああいう奴にはいきなり食いついても無駄だ、今日は怪しまれてる。明日別の方法を試す』
次の日…またも二人はマジックショーの会場にいる
ショー終演後…
マジシャン『また来たの?ネタバレするからやめてよ!』
No.1『考えてくれたか?』
マジシャン『だからやらない!いいから帰ってよ!』
No.2『あんたの素晴らしい考えに魅せられたのさ、この男は』
マジシャン『え?』
No.1『そうだ、我々平和を目指す集団にこそ化学は相応しい』
マジシャン『え?平和?』
No.1『そうだ!あんたの化学の知識を平和に生かそう!眠れない人を眠らせ、悲しい人を笑わせよう!どうだ?』
No.1が話したことは正にマジシャンの目指すところだった
マジシャン『え?え?』
No.2『俺達は悪い集団じゃない、平和に利用するなら実験場所を提供しよう』
No.1『これならいくらやっても何も言われない』
マジシャン『僕の事を悪い事に利用するだろ?』
No.1『するわけないだろ』
No.2『俺達はこの世を変えるんだ、人々にわからせるのだ』
マジシャン『僕の化学を人殺しの道具に使わないなら…考える』
No.1『使わない、我々は殺生は好まん』
マジシャンが悩んでいる
楽しいことだけを考えていたい
いつも薬局に来る、患いを抱えた人々に少しでも笑顔を
そう思っていた
マジックも薬が出てくるまでに楽しんでもらおうと考えたのが始まりだった
No.1『お前は特技を生かせば良い、一緒に平和を作ろう…嫌なことを忘れさせる、そんな存在になれ』
マジシャン『…』
No.2『どうだ、来ないか?』
マジシャン『…わかった、僕で役に立てるなら』
No.2『なら一緒についてこい』
コンサルの男は車からバックを取り出す
No.2『あんたにピッタリのピエロの仮面をプレゼントしよう』
No.1『これは我らの象徴。今日からコードネームNo.4だ、着けろ』
~「笑顔の約束」~
とある小さな民家を改造した劇場マジックショーを上演中
No.4『そらっ!』
観客の男『うおお!』
観客『…』
No.4『これならどうだ!』
観客の男『おお!凄い!』
観客『…』
No.4『どうもありがとうございました!(最近良く見にくるな、この人何回同じネタ見せてもウケる)』
観客の中には冷めた目で見るものも多いが、その中にいつも見に来る青年がいた
とても純粋にショーを楽しんでくれているよう
それがNo.4には嬉しかった
一ヶ月後
マジックショー本番…
No.4『ようやく夢見た本格的な舞台!頑張ろう!』
これはダイスが仕込んだ実験データ収集の場であった
No.4はそれを知らない
危害を加えるわけではない
あくまで薬の効果を測るために
No.4『皆さんこんにちは~!(あれ?思ったより人いないな、あっ!やっぱり来てる)』
観客からはまばらな拍手
ここは小さいながらもれっきとした芝居用の小屋
黒で覆われているためマジックには向いている
最大80名収容可能
No.4『さぁ始まりますよ!そらっ!』
観客の男『うおお!』
No.4『えい!』
観客の男『すげー!』
No.4『いよいよ大詰めです!良くご覧ください!えぃ!』
観客『きゃアアア!』
No.4『あっ!あっ!なんで!消えろ!消えろ!』
大詰めに取っておいたファイヤーマジックは火薬の量を間違え手袋に燃え移る
焦る心は状況を悪化させ芝居小屋の幕へと燃え移り、炎は瞬く間に広がった
観客の男『ダメだ皆!逃げろ』
No.4『まずい!消さなきゃ!』
……
観客の男『みんな逃げられたか?』
観客『そんなにいなかったからな』
観客『マジシャンどうした?』
観客の男『…!?まずい!』
メラメラと燃え続ける小屋
観客の男は中へと入っていく
観客の男『おーい!無事か!?ゴホッゴホッ』
No.4は自身の責任を感じ火を消そうと中に残り気を失っていた
No.4『…』
観客の男『おい!大丈夫か!』
No.4『…』
観客の男『まずい、意識がない…。あっちから出れそうだ、ゴホッ!外に出る前に…』
観客の男は少し慣れているよう
火事場の確認事項を思い出すようにチェックする
観客の男『うん、大丈夫だ』
……サイレンの鳴り響くなか応急処置が施される、幸い大事には至らなかった
病院の一室、面会時間の過ぎた夜…
No.2『無事か?』
No.4『…』
No.1『ここがどこかわかるか?』
No.4『う…』
No.2『あんたが起こした火事のせいで身辺調査が始まる』
No.4『うう、ごめん…』
No.1『安心しろ、お前ではないマジシャンに情報を書き換えた、ここに入院してる理由も別だ』
No.4『…』
No.2『明日夜迎えに来る。支度を整えておけ』
No.4の元に花が届く、手紙が付いている
(いつも楽しいマジックをありがとう、治ったらまた見せて)
観客の男からの手紙だった
その日の夜…
No.2『大丈夫か?』
No.1『行くぞ』
No.4『あ、うん』
朝届いた花を大切そうに抱えている
No.1『そんな花、何するんだ!』
No.2『いや、何も残さない方が良い』
No.1『そうだな、こっちだ』
病院の裏路地
No.3が車を停めて待っている
No.2『当分マジックは禁止だな』
No.4『え…』
No.1『ああ、死なれては困る』
No.2『実験は別の所でしよう』
No.4『…実験…じゃない、マジック…やらなきゃ』
No.2『何を言う?』
No.4『待ってくれ!その花捨てないで!』
No.1『見舞いでもらうような辛気臭い花などいらん!』
No.4『やめてくれよ!』
No.2『フッ、一体どうした?』
No.4『待ってる人がいる、僕のマジックを、彼に見せるまでは辞められない』
No.1『何を言ってる、ダメだ』
No.2『誰だそいつは?』
No.4『いつもマジックを見に来てくれてた人だ…喜んでくれるんだ!』
No.2『あんたのマジックでか…フフ、アホなんだな』
No.4『バカにしないでよ!うっすら覚えてるんだ!彼が命を助けてくれたんだ!』
No.1『命を?…ほう、調べてみろ』
No.3『おっし!着いたぜ!』
ラボに入りNo.2がPCを開く
No.2『関わった奴等は万が一のために調査済みだ、どいつだ?』
たくさんの個人情報が顔写真付きで表示されている
No.4『…彼だ!』
No.2『こいつか、○○電子産業株式会社…フリーターか?』
No.1『随分勇気あるフリーターだな』
No.2『なるほど、地元の消防団員か』
No.3『消防団員ってそんな事出来んのか?』
No.4『彼のためにやらせてくれ』
No.1『ダメだ!馬鹿馬鹿しい!』
No.4『…』
No.2『良く考えろ、せっかく事件を帳消しにしたのに、またやる気か?』
No.4『…』
No.1『わかれ、No.4!我々の仕事はショーじゃない』
No.4『…なら、彼を入れてくれ…』
No.3『は?』
思わぬ発言に一同きょとんとしている
No.4『彼をダイスに!』
No.1『ハハハハハ!』
No.4『僕は真面目に言ってる!』
No.2『こんな凡人、ダイスには必要ない』
No.4『経歴を見れば凡人だって事はわかる!彼の僕を見つめる目はとても純粋だ!』
No.2『そんな事は関係ない』
No.4『彼がダイスにいればいつだって見せてやれる!約束が果たせる!』
No.1『約束?』
No.2『何だか知らんがダメだ』
No.4『ダイスが火事に巻き込まれた時に役に立つかも?』
No.2『ならちゃんとした消防士を探す』
No.4『…なら、僕も抜ける…』
No.2『そうはさせん』
No.4『僕はもともとこう言うのに向いてない…』
No.2『男らしくない、卑怯だぞ』
No.4『卑怯で結構!僕はピエロだからね!』
No.1『…』
No.2『貴様!』
冷静なNo.2がNo.4の胸ぐらにつかみかかる
No.1『待て、そんなに大事なことなら一つ聞こう。約束とは何だ?』
No.4『…怪我が治ったら見せてくれって』
No.1『ほう』
No.4『助けてもらった礼をしたい』
No.1『監視カメラの映像で何か映ってるのを拾えないか?』
No.2『No.1何を考えてる?絶対ダメだ、理想的なメンバーのバランスが崩れる!』
No.1『良いからやれ』
No.2『…くっ…ほら』
そこに写し出されたのは芝居小屋の近所にあるコンビニの監視カメラから見える映像
火事が起き、観客達が飛び出てくる
No.1『…ほう、一度は逃げたのにまた入っていったな、勇敢だ』
No.2『…』
No.1『よし、こうしよう、そいつと話して、やると言ったら入れてやる』
No.2『なっ!バカな!』
No.1『なかなか勇敢で、人を救えるだけの知識と体力はある、勤め先もパートとは言え電子関係、役に立つかもしれんが…やると言うかな?』
No.2『…フ、面白い賭けるか…』
No.4『わかった!ありがとう!話してくる!』
No.4は急ぎラボを出ようとする
No.1『待て!良いか、秘密が漏れては困る、そこだけはしっかり出来るか確認しとけ!』
No.4『うん!』
○○電子産業、工場前
人々の帰宅時間
No.4は観客の男を探していた
No.4『あ!すみません!』
観客の男『…んあ?…あっ!』
No.4『良かった!会えた!あの時のお礼を、そらっ!』
マジックで花を出す
観客の男『おお!わざわざそれを見せに!?』
No.4『そうです!約束ですから』
観客の男『ありがとう』
No.4『僕は多分、これが最後でマジックショーを引退するんです』
観客の男『ええ?そうなのか!…そりゃ残念だな、もっと見たかった』
No.4『そうか、そう言ってもらえると嬉しいよ!あの時は命を救ってくれてありがとう!』
観客の男『俺も楽しませてもらった、その礼だ。んじゃ、元気で!』
No.4『待ってくれ!あともう一つ…僕らの仲間にならないか?』
観客の男『え?仲間?』
No.4『君も今のままで良いのかなって疑問を持ってるはずだ!』
観客の男『はぁ…?』
No.4『僕らは社会を変える集団、ダイス。君も一緒にやろう』
観客の男『…それは、楽しいのか?』
No.4『楽しいかわからないが、楽しい人生を過ごすために活動する』
観客の男『ああ、あんたも入ってるのか?』
No.4『もちろんだ』
観客の男『ふーん、なら、やる』
No.4『え?』
男のあまりにも簡単に出た答えにきょとんとしている
観客の男『んで、いくらだ?』
No.4『え?』
観客の男『会費とか?』
No.4『え?え?何かと勘違いしてないか?』
男は急に渋い口調で聞いてくる
観客の男『世直しって言うのか、そう言うの?』
No.4『ああ、間違っちゃいない、でも痛みを伴うかも?』
観客の男『…よくわかんないな、とにかくあんたがいるならやるよ』
No.4『え?え?…秘密とか守れるかい?』
観客の男『ネタをばらすなって事だろ?安心してくれ、口はかたい』
No.4『ちょっと違うような気もするけど…』
観客の男『集まる日とか場所とか服装とか教えてくれ』
No.4『なら迎えにくるよ…あ、そうそう服装だけど…よっ!』
観客の男『おお!凄い!』
No.4がマジックで出したのは銀色の仮面
No.4『これを着けてくれ、ただしこれを持ってることは誰にもバレないように』
観客の男『ああ、わかった、演劇か何かか?』
No.4『説明は後程…あ!あとこれから君のコードネームはNo.5だ!』
観客の男『No.5?あ!ファンクラブか!そうやってファンを増やすのか?俺が五人目か!もっと増やすべきだ!営業頑張りなよ!』
No.4『あ、えーと…あ~うん!』
No.5『んじゃ俺がNo.5ね、わかった、よろしくな!』
~「馬鹿と天才の境界」~
男『おい、お前!』
No.5『なんだよ?』
男『なんだよじゃないだろ!お前のせいで生産ラインが崩れるだろ、ちゃんとしろ!』
No.5が勤めているのは電子機器で使われる精密基盤の製造工場
No.5『え、何が?』
男『見ろ、前と同じ事してるだろ!』
No.5『ちゃんとしてるよ』
男『昨日、コスト見直しのために工程が変わっただろ!』
No.5『わかんないなぁ』
男『なんだ貴様、俺の図面がわからないとでも言うのか?』
No.5『いや、そういうわけじゃ…』
男『俺のおかげでここにいられると言うことを忘れるな』
No.5『わかった』
男『会社では敬語を使え』
No.5『わかりました』
男『ここでの失敗は親父さんの顔にも泥をぬる、覚えとけ』
男とNo.5は古くからの御近所付き合い
歳は離れているが小さい頃はいつも遊んでもらっていた
二人とも社会人になった今、No.5の不甲斐なさにイライラがたまっているよう
ピピピピ!
携帯電話が鳴り出す
メールを受信したようだ
No.5『うわっ!』
男『携帯は切っとけ!』
No.5『はい…』
(今日の9時に集まりがある、迎えに行くから家の前で待てNo.4)
No.5『…了解』
工場での一日が終わり
その日の夜
No.4が車で迎えに来る
No.4『やぁ待たせたね、行こうか!君を紹介するよ!』
No.5『ああ、頼む』
No.4『さぁ乗って』
車に揺られながら向かうと、そこは繁華街の隣にある
“昔の”繁華街
今は店の店主達も年老い、跡継ぎ達は都会へ出てしまっている
隣に次々オープンした新しい店に押され既に活気を失っている
No.5『ここはどこだ?』
No.4『あまり来ないでしょ?昔は栄えた場所だけど、市内の中心は移動してしまったからね~、僕が小さい頃はこっちで遊んでたのさ』
No.5『へぇ~』
No.4『忘れ去られた場所かな』
No.5『こんなとこでパーティーとかやるのか?』
No.4『パーティーではないよ、木を隠すには森の中って言うだろ?』
No.5『え?どの木だかわかんなくなっちゃうじゃん?』
No.4『…うちのリーダーは木を隠すには樹海だって…まぁあの、死んだ場所には誰も寄り付かないって事さ、年寄りばかりだしね』
No.5『つまり、騒いでも迷惑にならないと?』
No.4『……まぁ僕の世代では秘密結社って言った方が馴染み深いかな?』
そもそもNo.4もよくわかっておらず、No.1は面倒になり樹海の話をしたのだ
No.5『ふ~ん』
No.4『…着いたよ!』
そこは今、誰も使用していないスナックの跡地
経営者は夜逃げし、取り壊しの責任も何もない、誰も無関心の手付かずの場所
No.4『入って』
No.5『ああ…ここ人いるのか?』
No.4『大丈夫だよ!見てて』
No.4が壁の一部を押すと柱が開く
柱には数字のキーが並んでいる
No.4『********っと』
すると床が開き階段が現れ使われなくなった用水路に出る
そこから壁づたいに歩くと
また壁を開け指紋認証を行う
扉が開き、ようやく到着
ここは戦時中塹壕として使われた洞穴
市は立ち入り禁止にし、街では幽霊の噂話
誰も寄り付かない場所
ダイスの隠れ家はここだけではない
No.1『待っていたぞ、俺の勝ちか?』
No.2『使えなければ俺の勝ちだ』
No.1『君が命を救った男か?ようこそ』
No.5『あ、ああいえいえ、もうこれ付けた方が良いのか?』
No.4『ああ、そうだね』
No.2『待て、まだ認めたわけじゃない、…君は何が出来る?』
No.5『何がって、何が?』
No.1『フハハハハ!面白い!肝が座ってる』
No.2『○○電子、と言う事は担当は組み立てか何かか?』
No.5『よく知ってるな』
No.2『フ、バイトに出来ることなど限られてるだろ』
No.2がNo.1を呼び、少し離れる
No.2『駄目だ、使えなさそうだ・・』
No.1『そうだな…だが、わからんぞ』
No.1は自分の書いたテスト用紙をNo.5に見せる
No.1『なぁ、これが何の設計図かわかるか?』
No.5『う~ん、どれどれ?』
No.1『3日やる、何だか当てる事が出来たらダイスに加えてやろう』
No.5『え?会員になるにはテストがあるのか、わかった』
No.1『会員?…なかなか面白い…』
No.2がNo.1に耳打ちする
No.5はNo.4に送られ帰路に
No.2『諦めろ、俺たちに必要な人材ではない』
No.1『まぁそうだろうな、わかる訳が無い』
No.2『知ってて渡したのか…フッ』
また新たなメンバーを探そうとダイスが動き出す…
次の日の昼、工場の休み時間
No.5は設計図の解読に必死だった
No.5『う~ん、何だろこれ?こんなの組み立てられない、う~ん…』
男『おい!お前何してる、仕事しろ!』
No.5『え、ああすまない、でも時間がない』
男『何がだ?』
No.5『テストの』
男『資格でも取る気か?仕方ない、昔っからこうだお前は! …どれ?……』
男は設計図を解読した
恐らくこの街ではこの男以外には解読出来ないであろう
シンプルな機材で通常の技術では考えられない発想を使用した技術、組み立てても動く確証すらない
だがこれが出来れば正に夢のような機器が仕上がるのだ
男『……なんだこれは?……お前!どこでこれを!?』
~「集う六人!天才 VS 天才」~
ここは工場の休憩所
男は設計図を見て驚いていた
男『お前、どこでこれを…?』
No.5『ん?んん、いや別に・・・』
男『誰が描いた?』
No.5『あっ、うん・・いや、あの』
男『お前!これが何だかわかるか?こんなの作れる奴は天才としか言いようがない!こんなの・・・これは発明だ・・・』
No.5『なんなの?』
男『夢をヴィジョン化する装置とでも言うべきか?何のために?これは脳波の波形を表す計算式だ』
No.5『ん~?よくわからないな』
男『簡単に言えば人の見てる夢を見れるようになる』
No.5『おお、なるほど。教えてくれてありがとう!』
男『う~ん人の夢をヴィジョン化するだと・・・可能なのか?・・・試してみたくなる』
ダイスの隠れ家
No.5は晴れ晴れとした顔で戻ってきた
No.1『フフフフ、戻ってきたな、3日間 しっかり考えてわかったか?答えを聞こう』
No.5『人の夢を見るための装置だ!』
No.1『なっ!何!?』
No.2『まさか…当たっているのか?』
No.1『ああ、夢を見てるようだ、まさか理解できるとは…』
No.2『…』
No.5『ふふん!もっと出してみろ!』
No.1『…ほう…随分と強気じゃないか?…ならこれはどうだ』
No.2『そんなに見せて良いのか?』
No.1『構わん…開発者以外は見てもわからん』
No.5『良いよ!答えを出してくる!』
No.2『待て、この場で解け』
あまりに意気揚々と返事をするNo.5をNo.2は疑っていた
No.5『え?・・・』
No.2『どうした?解いてみろ』
No.5『え、え~と・・・』
No.1『お前が解いたのではないのか?』
No.5『う~、あ、い、いや・・・あの』
No.1『時間をやる、もう一度やってみろ』
No.5『ああ、わかった!んじゃ』
No.5は足早にその場を立ち去る
No.2『なぜだ!あいつが解いてないのは明白だ!』
No.1『あいつが解いていないのは間違いない…だとしたらそのウラの人物が知りたい、泳がせる』
No.2『思わぬ糸口か?食えんな…フッ』
翌日、工場の開発ルーム
男は終業後、何かの実験をしていた
男『くそぅ、何度やってもダメだ。うまくいかん』
No.5『あ!いたいた!ねぇ今度はこれを見てくれよ』
男『今度はなんだ?』
No.1から預かった設計図に目を通す
男『これも凄い!・・・』
No.5『よく見ただけでわかるなぁ、んで何?』
男『これは切り替え機能のついた言語変換装置だ』
No.5『何に使うの?』
男『何する?う~ん目的がわからん…脳波をキャッチし人の心の動きを読んだり、思ってることを言葉に変換できるプランだ…恐らくな』
No.5『わかんないな』
男『簡単に言えばお前の考えを読み取ることが出来る』
No.5『なるほど』
男『さらに俺の考えている事をお前に伝えることができる』
No.5『あ?あ~ん?』
男『これを使えば人間がスピーカーのようになる…受信機もついてないのに可能かどうかは知らんが』
No.5『なんだかわかったような、わからないような・・・ありがと』
男『そろそろ話せ、これをどこで手に入れた?』
No.5『ん~、だめだ秘密だ…』
男『フン、秘密といわれた時点で気になって仕方がない、お前はバカだな・・・まぁいい』
No.5『んじゃ』
No.5は足早にその場を立ち去る
男『いずれわかる…泳がせるか…』
翌日、ダイスの隠れ家、自信満々なNo.5
No.1『わかったか?』
No.5『人間をスピーカーにする機械』
No.1『スピーカー?』
No.5『え?違うの?』
No.1『いや、出来なくはないな』
No.5『相手の考えを読むことができる?機械?』
No.1『うむ、決まった…誰だそれを解いたのは?』
No.5『俺だ!』
No.2『平気で嘘をつくな』
No.5『い、いや…俺だ!』
No.2『お前にわかるように言う、その男に会いたい、連れて来い』
No.5『…』
No.1『これらの設計図は普通の理屈が通じない、工学経験者に見せても馬鹿にされるのが落ちだ』
No.2『これを理解出来る奴に会いたい…やれるな?』
No.5『……多分来ない』
No.1『なぜだ?』
No.5『仲間にしようと思ったら、余計離れる…昔からプライドが高い、自分が上じゃなきゃダメな人だ…多分一緒にいたがらない』
No.5から本名を聞き出し、市民のデータベースにハッキングする
No.2『こいつか?』
No.1『見せろ』
No.2『なるほど、家業はうまくいってないが、彼の稼ぎのおかげで食い繋いでる感じだな』
No.1『ではこうしよう、連れてこれたらお前も正式加入だ』
No.5『え?今までのは?』
No.1『無しだ、そもそも貴様が解いたわけじゃない。これがテストだ』
No.5『う~ん…難しいな…』
No.1『話せ』
No.5『え?何を?』
No.1『俺たちの事を話すんだ』
No.2『バカな!足がつく、信用できなくては…』
No.1『見ろ、こいつでさえ話していない…足がついたらその時考える』
No.2『…』
No.1『天才集団だと話せ』
No.5『…わかった!行って来る!』
No.5が去るとNo.1はデータベースを見つめていた
No.1『どこかで見たような…気のせいか』
工場の終業後、開発室
男は夢を可視化する装置を実験的に組み立てていた
それがうまく行かず設計図を眺めながら工場内を歩いている
男『何度やってもダメだ、何がいけないんだ…図面が良くないのか?しかし誰がこんなものを?』
No.5『あ!丁度よかった!ちょっと見てよ!』
男『なんだ?残業か?仕事しろ仕事』
No.5『仕事はやってるよ、もう終わってるんだから良いだろ?』
No.5はオリジナルのラジコンを組み立てている
男『ああ、どれ?ん…ちゃんと出来てるじゃないか、うん…うん合ってる』
No.5『ちょっと勉強したんだ』
男『腕を上げたな、親父さん…違うな、その設計図をつくった奴の所で教わったのか?』
No.5『ああ、うん、構造の理解の仕方。ポイントを押さえれば簡単だって言ってた』
男『ほう』
No.5『天才集団なんだ』
男『天才集団?』
No.5『天才なんだ、みんなあんたより頭が良い』
男『ほう、誰も聞いてないのに、そんなことを』
No.5『俺そこに入ったんだ』
男『…』
No.5『天才集団に』
男『…』
No.5『俺も天才なんだ』
男『何だ貴様!俺には出来ないと言いたいのか!誰だそいつら!』
No.5『天才集団だ、特にリーダーのNo.1は頭がとにかく良いんだ!あの設計図が何かわかっても、どうせポイントを知らない奴には作れないって言ってた!』
男『なに!!No.1だと!?その男か!あの図面を書いたのは!』
No.5『そうだ』
男『その男はアレを完成させたのか!』
No.5『え、え~とそうだね』
男『フン、嘘だな』
No.5『いや出来てる!俺はNo.1凄いと思う!尊敬してる!』
男『尊敬だと…ほう…俺が何度やってもダメだと言うのに?出来てるだと!?』
No.5『ああ』
男『フン、確かにそれなら天才だ…だがなぜ貴様が誘われたのだ!それが納得できん!』
No.5『俺が尊敬してる人がいると言ったら「そんな奴より俺を尊敬しろ!お前の才能を俺が開花させてやる」と…』
男『…』
No.5『だから俺は仲間になった』
男『…』
No.5『俺たちの天才リーダー』
男『…』
No.5『今日も教わるんだ!俺もっと凄いの作れ…』
男『会わせろ!』
No.5『え?』
男『俺達の天才リーダーだと?気取りやがって、本当に装置を完成させたのか確かめに行くだけだ、アポ取れ!』
No.5『アポって何?』
男『約束のことだ!』
No.5『わかった…ちょっと待ってくれ』
No.5が電話をかける
『もしもし俺の…私の知り合いが会いたいって言うんだが…ですが…あ、本当ですか。忙しいのにすみません、では明日』
男『…どうだ?』
No.5『仕方ないから会ってやるって』
男『どこまでもバカにしやがる…何様のつもりだ!明日だな!いいだろう』
男は怒って去っていった
これらは全てNo.1とNo.2の書いたシナリオ通り
長年の付き合いのNo.5
そのアドリブもこたえていた
翌日…No.3、No.4が迎えに来る
男と待ち合わせをしている
No.5『うまくいった!』
No.4『やったね!』
男『遅くなってすまんな、誰だ?』
No.5『マジシャン』
男『はぁ?』
No.4『天才集団の一人です』
男『フン、そうか』
No.4『これからあなたを私たちのリーダーの元に案内します』
男『仕方ないから会ってやる』
No.3『早く乗れ!』
ダイスの隠れ家
進んでいくにつれ
確かに凄い技術の集団であることを男は感じ取っていた
No.5『着いたよ』
No.1『ようこそ!』
男『あんたかあの素晴らしい図面を書いたのは?』
男はイラつく気持ちを抑え
相手が何者なのかを見極めようとしていた
No.1『そう天才集団ダイスのリーダーNo.1だ、よろしく』
男『ダイス?』
No.3『チーム名だ』
No.1『そう、ほらNo.5』
No.5『おお!ありがとう!』
No.4『こうやってみんなで仮面つけるのさ』
男『No.1さんよ、顔見せろよ、失礼だろ、初対面なのに』
No.1『ああ、すまんな』
No.1がゆっくりと仮面を取る
男『…お前…は!?』
No.1『何だ?誰かに似てるか?それともどこかで会ってるか?』
男は過去を思い出していた
『(○○高校理数科のトップ、同じ高校の後輩だ…確か部活も一緒だった?…成績優秀でスポーツ万能だった?なぜ俺を覚えてない…)』
端から見ればずっと目を反らさず見つめ合っているよう
いや、睨み合っている異様な気迫が漂っていた
No.1は男の事をまるで覚えてない様子
男『(くそ、おちょくってるのか?俺だって結構目立ってたはずなのに覚えている素振りを微塵も見せん…)』
No.1『どうした、なぜ黙ってる?』
男『(しかも上から目線だ…ちくしょう…)』
No.1『まぁ俺の図面を解読したのは褒めてやる』
男『ダイス?ダイスだと、お前ら5人しかいなじゃないか?』
No.1『ほう気付いたか、実はあと一人足りない、我々は6人でダイス。その通り!素晴らしい!流石頭が良い。まぁどうでも良い事だが』
男『(くっそ、おちょくってる)』
No.2『あんたをここに呼んだのは他でもない、誰かダイスにふさわしい天才を知らないか?』
男『ああ?』
No.1『天才的な技術者がほしい』
男『フハハハハ!』
No.3『なんだ急に?』
男『そうか、天才を紹介してほしいのか?』
No.1『ああ、あんたが会いたいと言うのをNo.5から聞いたんだが断ったんだよ。でもな天才を知ってるかもしれないと言うので仕方なく…な。と言うわけだ』
男『…沢山知っている。何気にうちの企業はある部分にかけてはトップを走ってるからな、有能な技術者はいくらでもいる!』
No.2『そうか、良かった』
No.1『なら紹介してもらおうか』
男『良いだろう…俺だ!』
No.2『(フ、乗ってきた)』
No.1『ん?誰があんたを紹介しろと言った?俺が言ったのは天才だ天才!』
No.2『(No.1まだやる気か?)』
男『お前らが持ってるマスク…1、2、3、4、5…貸せ!』
No.5『ああ!』
男はNo.5の持っていた銀の仮面を奪い取る
男『そうなると残りは6か、良いだろう!この中では一番数が多い!大物は最後にやってくる!俺がトリだ!』No.2『(なんて勝気なんだ)』
男『この集団で俺が一番の天才だと証明してやろう』
No.2『ほう、No.1に勝てるのか?』
No.5『No.4は化学に長けてるんだよ』
男『どうでも良い!』
No.4『…』
男『No.6』
No.5『え?』
男『お前らそう呼び合うんだろ?なら俺はNo.6』
No.1『入りたいのか?』
男『入ってやるんだよ、これで完成だろ?』
男は奪い取った銀の仮面を顔に当てる
一人は社会への復讐のため
一人は責任を果たすため
一人は家族のため
一人は夢のため
一人は友情のため
一人は頂点を目指すため
ここに6人が集う
No.6『天才集団ダイス!』
…
これは始まりにすぎない
ここからダイスの静かな攻撃が始まる
…
ダイス結成秘話編、完結
『ヒーローの誕生』~ダルライザー遭遇編プロローグ~
小学校の放課後、街の芸術推進の一環で1ヶ月間の演劇の課外授業を行っている
男はその特別講師
自身が役者を目指し学んでいたが年齢と将来を考え夢を諦め帰郷
未だ夢に対しての未練も多く、こういう機会が本人にとっての休息だった
男『よし!じゃあ今日はおしまいだ!次は明後日ね!』
子供達『は~い!さようなら~!』
『はい、さようなら!』
電話が鳴る
男『もしもし?あ、はい!了解です!じゃあ取材に伺います!明日の19時で!』
男は役者を目指していた時に買ってくれていた映画監督の影響を受け、見よう見まねで始めた映像編集が副業だった
この電話はその依頼
今回は結婚式でプロフィール映像を作ると言うものだった
男『あ!そう言えば!』
男は自転車でレンタルビデオ店に向かった
大の映画好きで洋画ばかり見ている
男『良かった!あった!』
店員『ヒーローイントゥーザ・ダーク一本でお間違いないですか?』
男『はい!』
店員『一泊…』
男『二泊で!!』
店員『あ、はい。』
家業は老舗のレストラン
ご飯時じゃないと人があまり入らないが、それで何とかやれている
昼と夜はその手伝いをし、夕方は演劇を教えている
仕事を終えた後は映画を見る日
…
…
『この腐敗した街を何とかしなければ!俺の心を闇に染め、悪人どもを恐怖で支配する!…そうだ、こんな感じだ!街を変えるにはインパクトが必要だ!…』
…
…
翌日
昼の一仕事を終え、依頼を受けた場所へ向かう
そこには若い男女が座っている
男『じゃあ、お二人のプロフィール映像作成のために、ちょっと色々お伺いしますね!』
若い男『はい』
若い女『…』
ある程度のデータは事前のアンケートで聞かれた状態だが、出生日や勤め先以外はほとんど空白だった
男『小さな頃の夢とかありました?』
若い男『うーん?…特にないっすね。』
男『何でも良いですよ!野球やってるみたいですが、野球選手とか?』
若い男『ああ、でもなれないっしょ。やってただけだし』
若い女『何これ?こんなにメンドイの?』
男『まぁ紹介なので、こちらが考えるにしても何もないと全然わからないので…』
若い女『はぁ?なに?だから面白くしたいって言ってんじゃん?出来ないの?』
男『…彼女さんは?…夢とか?』
若い女『ない』
男『じゃあ学校の思い出とかでも良いので?…ほら、修学旅行で何か楽しかったとか?』
若い女『んじゃ修学旅行』
男『…はは』
若い女『なに?何なの?んじゃ~強いて言えば友達いじめてた!いい?』
男『いや、それは書けないですよ…』
イライラした新婦がタバコに火をつける
男『お腹にお子さんいるでしょう?やめた方が良いですよ』
若い女『関係ないでしょ!』
…
色々と難航したがとりあえず作品は完成
この二人の依頼は無事終えた
その後のシラカワ商工会議所青年部の集まり
今日の議題は市のキャラクターを作ると言うこと
男は小さいながらも経営者の息子
青年部は皆、自身が経営者や経営者の息子の集まりだ
そこでは色々なアイディアが出された
ほとんどがかつて英雄だった武将の名前をもじったキャラかダルマであった
その会議中に青年部唯一の紅一点の放った『ヒーロー』が男は忘れられなかった
その夜眠ろうとしたが眠れなかった
新しい市のキャラクター…
街を変えるにはインパクトが必要だ…
あんたには関係ないでしょ!…
ヒーロー…
男『これだ!』
会議で描かれたものはダルマに手足の生えたいわゆる二頭身キャラ
ずっと映画でヒーローを見てきた男には既に図案が浮かんでいた
あっという間に絵が描きあがる
男『これが七転び八起きを伝えるダルマのヒーローだ!…眠い…』
翌日、青年部に絵を持っていくと誰がやるのか?等の話し合いが行われた
やはり描いた男が演劇の経験もあり適任とされた
今回の会議ではどんな物を作るのかプレゼンをしなくてはならない
男『今考えているものは、皆が捨てたゴミなどが集まって子供を襲い、それを助けると言うのを考えています。』
会員『んじゃとびっきり強そうな悪者作れ!』
男『あ、はい!』
会員『それはプロの業者にお願いするんですか?』
男『いえ、同じような事をしている人達を調べると皆、手作りしてるようです!』
会員『出来んの?』
男『やってみないとわかりませんが、みんな苦労して作ってるみたいなので、楽は出来ません。“子供達喜んでくれるかなぁ”って日記に書いてありましたが、それが大切なんだと思います!』
まだまだ具体的には伝わらなかったが、協力してくれるメンバーは増えつつあった
少しずつ前に進んでいった
男がヒーローを完成させるのに半年
初めてのお披露目の日
それと同時に市内でヒーローの名前公募が始まった
アクティオン
ダルマイザー
テイシンガー
カッセイザー
ダルマン
ダルライザー
レッドファイヤー
…他全部で500通が集まった
男『どれが良いか皆で投票したいと思います!』
投票の結果は僅差だがダルライザーだった
副会長『良いんじゃない?ダルマが起きる。だから英語でライズでしょ?七転び八起きだから』
男『ああ!本当だ!そうですね!』
そこにいた全員のほぼ満場一致で決定した
それからはショーに向けたトレーニングの毎日が始まる
悪役の男『きっついな、そんなにやらなくても大丈夫じゃない?』
男『人前に立つならそれなりの努力をしろと教わりました!その努力の量が多ければ多いほど人は感動するんです!やらなきゃダメです!』
…
そんな話を地元の新聞やTVも取り上げた
ヒーローショーも少しずつ上演出来るようになり噂は少しずつだったが広まっていった
それは予想しない相手にも知れ渡った…
…
…
No.1『ほう、地域活性化のヒーロー?地元も捨てたもんではないな』
No.6『新聞など読んでる場合か !』
No.1『情報は大切だ、世はヒーローが現れる時代か!ハッハッハ!笑える!』
『闇に紛れて』
ダイスのアジト、No.1は新聞の経済欄を読んでいる
No.1『景気はやや上向き傾向…』
No.2『ん?これはお前が前にいた会社じゃないのか?』
No.1『なに?…随分株価が上がってる』
No.6『半導体関係が好調らしいな』
No.5『半導体って何だ?』
No.6『バカか貴様!今まで一体何を作ってたつもりだ!』
No.4『まぁまぁやめなよ!』
No.3『今さら景気が上向きとか言われてもな…』
No.2『フッ、地方には関係ない』
No.1『…』
No.4『最近よくテレビ何かでも良い兆しが見えるって言ってるよね。』
No.1『ふざけるな!!』
全員『えっ!』
No.1『何が上向きだ…半導体が好調?…そして元の会社の株価がUPだと…普段からロクな報道もせずに散々不景気だと煽り立て、その言葉一つにどれだけの意気を奪われたか!ここで景気が上向きと聞き、どれだけの勇気が湧くか!…だが、その高揚する気分を感じれば感じるほど、なぜ今さらなのだと言いたくなる!…許せん!』
No.2『…ペンは剣より強しか…』
No.1『…かねてより考えてきた作戦を実行に移す…今がその時だ』
No.6『あの設計図のマシンか?』
No.1『そうだ、電波を送信する施設に対し、逆に電波をたどり、そこにいる人間の脳波を操作する』
No.4『全然わからないな~』
No.6『人間の言語中枢を電波を介し刺激する』
No.5『それで何をするんだ?』
No.2『今の流れでわからんのか?…フッ、メディアを利用し情報攻撃を仕掛けるのだ』
No.3『俺たちが奪われたように、やる気を奪ってやるってことか』
No.1『そうだ、我々が人々を操作するなら、今はこのやる気が邪魔だ』
No.6『で、どうする?そう簡単に脳波をいじる電波なんて出せん』
No.1『強力な電波を出している場所があるだろうが、ほぼどこでも受信する超短波』
No.6『VHFだな』
No.5『VHF?』
No.4『テレビだよ!』
No.1『だからこそ言語中枢まで届く波長を送ることが出来る』
No.3『ハッハ!そうか!普段送られて来るものを利用してやるってことか!カウンターだな』
No.6『だがわかってるのか?あの仕組みではかなり大型だ』
No.2『脳波を刺激するには仕方がない』
No.6『ここでしか使えない事に問題がある。小型化を検討し、作戦に幅を持たせるべきだ!』
No.1『何だ貴様、俺の設計にケチ付けるのか!』
No.6『何!作戦がもっとスムーズに進むようにだ!』
No.1『何だ?リーダーにでもなったつもりか!』
No.2『まぁ待て、まずは実行が先だ、No.6、あんたはそれを今すぐやれるのか?』
No.6『いや、時間が必要だ!』
No.2『ならまずはNo.1の設計図で作る、その方が早い』
No.1『製作には時間がかかる、お前の頭脳は借りたい』
No.6『フン!』
No.1『イエスって事だな』
No.2『皆で手分けして材料を集めるんだ』
No.5『おお、なら俺の職場の工場に失敗した部品がかなりあまってる!』
No.6『お前のお陰でな!』
No.5『え!?…』
No.2『別な意味で役にたったか…お前には天職かもな』
No.5『そうか?ハハハハ!』
No.4『誉められてないよ~』
No.5『え!?…う、うん…』
No.2『No.3取りに行くぞ』
No.3『何時だ?』
No.2『深夜2時』
必要な部品の洗い出しが終わり
夜はだんだんと暗くなる
一方では一際賑わいを見せるも場所もあった
男『かんぱーい!皆さんお疲れ様でした!』
仲間『お疲れ、お疲れ!初デビューだからこれからだな』
男『ええ、そうですね!良い名前も見つかったし、これから本格的に動いていきますよ!』
仲間『楽しみだな!頑張ろうな!』
皆『ははははは!』
その頃ダイス達は工場に部品の調達に潜入しようとしていた
No.6『こっちだ』
No.3『おう!』
No.6『バカ!そっちじゃない!』
No.5『痛て!』
No.6『廃棄品じゃないと足がつく』
No.2『廃棄ならば良いんだな?』
No.6『それなら俺が何とでも言える』
No.3『無料回収してくれる業者とか』
No.6『そうだ』
No.3『しかし、こんなゴミ、役に立つのか?』
No.2『役に立つ部分を探すんだ』
No.3『へへ、お前が言うな』
No.2『…』
No.5『…』
No.6『必要な部品リストだ、これならお前にもわかるだろ』
No.5『お、おお!』
No.3『俺にもくれ』
No.2『よし、3時までだ』
一方、二次会まで終わり
お祝いムードも静寂に変わる
男『皆体力あるな~、大丈夫ですか?』
仲間『ああ、大丈夫だ!タクシー呼んでくれ!』
男『…はい』
既に酔っ払い気味の仲間を介抱しタクシーに乗せる
男は酒を飲まないからこんな役目が多い
男『じゃあお気を付けて!…ふぅ、もうこんな時間か…』
男は近所だったため、徒歩で移動
ダイス達は荷渡しを工場の柵越しにしていた
男『ん?…何してんだ?』
No.6『よこせ』
No.5『はい』
No.2『集まったのか?』
No.6『いや、まだ足りないが…』
No.3『おい、見られてるぜ?』
No.2『慌てるな普通にしてろ、その方が良い』
男『ちょっと…あんた達、何してるんだ?こんな時間に?』
No.2『よし、慌てずゆっくり乗れ』
男『あの~?まさか泥棒?』
No.6『出せ!』
No.3『あいよ!』
男『ああ!ちょっと待て!』
車は凄い勢いで消えていった
ナンバーは回転し見ることが出来なかった
No.3『まずいな、見られたか?』
No.2『いや、顔は暗くてわからないはずだ』
No.3『どうする?』
No.2『う~ん、あの状況でお前なら声をかけるか?』
No.5『いや、かけない』
No.3『俺もかけないな』
No.6『また来るって事か?』
No.2『そうだな、そう言うことが出来る男だ、足を捕まれる可能性がある…No.6会社には先手を打っておけ』
No.6『指図されなくてもそのつもりだ』
No.2『フ…次はNo.4を連れてこよう、様子を見る』
次の朝、工場の上司に説明をしている
No.6『私の知り合いの回収業者に頼んでおきました、皆日中は仕事なもんで、昨日酔っぱらいに絡まれたそうで…通報?ああ、多分判断が付かなかったのでしょう…』
男は警察に通報していた
その日の夕方
ダイスのアジト
No.6『全く疲れる』
No.2『どうだった?』
No.6『監視カメラの映像は切り替えておいた、だが説明には多少無理がある、次は押しきれんな』
No.1『ほう、地域活性化のヒーロー?地元も捨てたもんではないな』
No.6『新聞など読んでる場合か!』
No.1『情報は大切だ、世はヒーローが現れる時代か!ハッハッハ!笑える』
No.2『ヒーローか…フッ』
『立ちはだかる正義』
市内の警察署、謎の集団が盗みに入ったことを男は伝えにやってきた
警察『あなたお酒入ってたんですか?』
男『え?ええ、多少』
警察『困るんですよ、正常な状態で見た事でないと』
男『いや、でも見たんです!怪しそうな奴等が!…』
警察『怪しそうなでしょ?それはあなたの判断でしかない』
男『逃げるように!…』
警察『とにかくね、24時間監視してるカメラの映像見て何でもなかったから大丈夫ですよ、あなた一人映ってましたから。もうそれで良いね?』
男『え!…う、はい…』
警察『じゃあ失礼しますよ』
男が何を伝えても聞いてはもらえなかった
証拠となるものが何もなかった
もちろんこれはダイスが工作したことだが、これを知る者は誰もいない
男『…自分で確かめるか…』
夜、ダイスの車内
No.2『通報?そうか、なら良かった』
No.6『何がだ?』
No.2『自分で確かめに来るなら通報するか?』
No.6『ほう、また来るかもしれんと言っていたな。お前のプロファイリングが役に立たなかったわけか』
No.2『フッ…俺の期待しすぎか…』
No.4『よし!準備万端!』
No.2『No.4はここにいてくれ、万が一誰かに見られた時に頼む。さあ、行こうか』
No.3『おうよ!』
No.2『No.3もだ、あんたはここですぐ出れるように準備しててくれ』
No.3『あ、ああ…』
No.6『廃棄では手に入らない部品がある、それの収穫が目的だ』
No.2『行こう』
No.6『よしいつもの要領でやるぞ!』
No.6とNo.2が車から飛び出ていく
その車内
No.4『…』
No.3『…』
No.4『(彼はちょっと怖いなぁ)…ねぇ?』
No.3『ああ?』
No.4『いや、なんでもない』
No.3『あ?ああ…(カマ臭えなぁ)』
No.4『あの?』
No.3『なんだ?』
No.4『さっきから誰か見てる…』
No.3『何!?』
車の外を見ると男がカメラを持ちながら何かをしている
車に人が乗っていることは気が付かない
見えないようになっているからだ
男『うまく撮れないな、暗すぎる』
No.3『なんてこった!早く言え!!』
No.4『ひいい!』
No.3『大変だ!おい!No.2と6に伝えろ!』
No.4『あああ!わかった!』
No.3が車から降りて男に近づく
男『ん?気付かれた!』
No.3『待て!何を撮影してる!』
男『うあああ!』
男は猛ダッシュでその場を立ち去ろうとする
No.4が連絡を入れる
No.2『何!?』
No.6『お前のプロファイリングは間違ってなかったと言うことだ!』
No.2『追うぞ!』
No.3が男を必死で追いかける
No.3『おらぁ!』
男『うわ!』
No.3『そら!捕まえたぞ!そのカメラをよこせ!』
男『離せ!』
No.3『痛たた!くそ!』
No.2『No.3!』
No.3『逃げられたあっちだ!』
No.2『No.4やれ!』
No.4『うう!うん!そら!』
そこには頼りないNo.4
だが開発した涙の出る薬玉を破裂させる
男『え?なんだ!?...くあ!目が、痛たい...くく!』
No.2『よし!よくやった』
男『お前ら何者だ!』
No.6『とりあえず、そのカメラを渡してもらおう』
男『くそ!目が開かない...!!』
No.3『ガキが!』
No.2『顔が見えるか?』
男『うう、目が痛くて開かない』
No.2『見られていない、No.4実験の成果を』
No.4『そら!』
1分後、辺りには男一人しかいない
男『あれ?さっきまで誰かいたような?あれ?あれ?カメラ?カメラ?!なんで目が痛いんだ!?くっそ~!痛い!』
ダイスの車内
No.2『危なかった、だがこれで顔を突っ込むと危ないという事はわかったはずだ』
No.6『もう来ないと言う事か』
No.3『へへ!さすがに来ないだろ』
No.2『No.3、奴の顔は確認したか?』
No.3『あ?いや、何となくくらいだ』
No.6『バカな!それではこちらから対策の打ちようがないではないか!』
No.3『辺り暗いしよ!このマスク見辛いしよ!こいつが投げた煙で目を抑えてたからわかんねぇだろ!俺に言うな!』
No.2『…まぁ、良い。一番は俺達が見られないことだ』
ダイスのアジト、No.1が出迎える
No.1『どうだった?』
No.4『成功した!1分くらい忘れさせる事が出来たかな?』
No.1『そうか、ご苦労。次の作戦を伝える、準備を同時進行で進めねばならない、まずはこの辺りを実験的に使用する。電波等にこれを設置するんだ』
No.1はアンテナの付いた小型の機械を渡す
No.2『装置の受信機か?』
No.6『そもそも動くのか?』
No.1『ふん、やってみなければわからない。だがこれが無ければ先に進まない』
No.3『了解したぜ!設置場所はどこだ?』
数時間後、男の部屋
男は遅くまで頼まれた映像の編集をしている
男『ああ!眠い!もうこんな時間か、寝るかな』
外から音が聞こえる
普段は物音があまりしない時間
男『ん?何だあいつら?』
暗くてよく見えないが銀色のマスクが鈍い光を反射する
男『あっ!この前奴らを追ってた!なんでこんなとこに?…そう言えばあいつらに何かをかけられたんだ…ちょっとずつ思い出してきた!』
鉄塔の下、作業が少し難航している
No.3『ここか?あれ違うかな?夜じゃ説明書見えねぇな』
No.6『どれ貸してみろ?』
No.4『あの?』
No.6『ん?』
No.4『あ、あれ?』
No.6『ん?なんだあいつは?』
男『おい!あんたら何やってんだ!』
No.3『お前こそ何者だ?』
男『誰だっていいだろ、それより今やってる事が犯罪なら俺は止めるぞ』
No.3『はぁ?やってみろよ!』
男『せやぁ!』
No.3『よっ!っと、おら!』
男『痛た!くそ!でやぁ!』
No.3『おっと、ほら!』
男『ぐふ!』
No.3『へっ!弱いな!』
No.6『帰れ小僧!』
男『うう』
No.6『俺たちは自分たちの仕事をしているだけだ、次に邪魔をするならどうなっても知らんぞ!覚えとけ!行くぞ!』
No.4『そら!』
No.4の恒例の薬玉
男『うう、くっそ~。痛え…なんでこんなとこで寝てんだ?』
翌日、男は大好きな映画を見ていた
以前俳優を目指していた頃を思い出しながら
男『こんな風に立ち回れたらな~?ん?こうかな?久々だからよくストレッチして…』
男は何度やっても太刀打ちできない自分とヒーローとして活動する自分のギャップに葛藤していた
それからは毎日毎晩何かしらのトレーニングを積んでいる
男『こう?…よし!出来た!』
あれから少し時が経ち
ダイスの作戦も準備が整いつつあった
No.1『なぜだ?なぜ動かない?』
No.6『見せてみろ、う~ん。これが壊れてるのか?』
No.1『いや違う、お前の持って来た部品が合わないのだ、俺が直接探しに行く』
工場のある近くの飲み屋
仲間『お疲れ!今日のショーも大成功だな!』
男『いやいや』
仲間『前より動けてたぞ!練習したのか?』
男『えええ、まぁ!』
仲間『よっしゃ!もう一件行こう!』
男『もう止めといた方が良いですよ!タクシー呼びますよ!』
工場の前
No.1『ここか、いつでも出れるようにしておけ』
No.3『おう!』
No.1が内部に潜入する
自身の求める部品を求めて
No.1『ほほう、ここは俺にとって宝の山だな!』
男は仲間をタクシーで見送る
今となっては恒例
男『じゃあ失礼します~!どれ帰るか』
工場内部
No.1『ふふインスピレーションが湧いてくる』
工場の外
男『あれ?またあの車が止まってる?ナンバーは…え?無い?…あいつ、俺を蹴ったやつだ!』
探していた部品を見つけ車に戻る
No.1『よし、欲しいものは手に入った』
男は持っていたバッグからコスチュームを取りだし…
男『今度はそうは行くかよ…ん、…よし!行くぜ!』
No.1『No.3行くぞ、ん?』
No.3『ん?』
No.1『…驚いた、ヒーロー…か?』
そこには新聞で見た真っ赤なコスチュームを纏った男が立っていた
『復讐』
男『お前達!いつもいつも何をしてるんだ!』
『目覚め』
21時を過ぎるとある場所に集まりだす。
そこは寂れた飲み屋街、今は細々と営業する店がポツポツとあるだけ、静まりかえった夜…
No.1『転送実験は大きな成果をあげた、狙った企業は悲鳴をあげている』
No.3『恐ろしい奴だあんたは』
No.1『ハッハ!まぁな、意志言語転送装置は情報戦用マシンだ』
No.3『意志言語転送装置?』
No.1『そう名付けた、これは電波を介し我々の意志を対象者の言葉を持って伝える』
No.2『なるほど、そのままだな』
No.6『フン、センスが固いな、だがそれを使うにはここに箱詰めだ!』
No.4『小型化とか?』
No.6『…』
No.1『フン!出来ないだろ!』
勢いよく扉が開く
No.5『遅れてすまん!』
No.2『ああ、まぁいなくても良かったがな』
No.5『…』
No.1『よし、全員揃ったな』
No.2『始めてくれ』
No.6『フン』
No.1『我々の目的は社会への制裁と理想郷の実現だ』
No.6『前々から疑問だが、本当に出来ると思ってるのか?』
No.1『そう言うと思っていた、だから今後も同じように何度か実験を繰り返す』
No.3『実験?』
No.1『そうだ、我々の考えてるものを築くには予算も労力もかかる』
No.4『何度か実験をして効果を図るんだね!その後大きく出る!』
No.1『ああ、そうだ』
No.6『次の対象物はどこだ?』
No.1『白河だ』
No.3『白河!?』
No.2『企業ではない、街そのものを対象にする…か』
No.1『我々の住みなれた場所、馴染んでるだけに何かあっても対処しやすい』
No.2『人口も6万ほど、狭くも広くもなく、いりくんだ城下町。隠れやすく逃げやすい、慣れてる俺達にはな』
No.6『ほう、格好の材料だな』
No.1『暫くはここでのデータを取る』
No.6『で?次の作戦は?』
No.1『ああ、これだ』
No.5『なんだこれは?』
No.6『人の夢を見る装置だな』
No.3『人の夢?何のために?』
No.1『まだ出来るかわからんが、ゆくゆくは夢を様々な物に変換する』
No.3『悪夢とか?』
No.4『何のために?疲れさせるって事?』
No.5『寝れないの嫌だな…』
No.1『それだけではない、深層心理に我々が導く方向をインプットする』
No.6『夢で意識を操作…マインドコントロール…と言うことか』
No.3『だがそんなの俺達に何の得が?』
No.1『わからんか?人は困難な状況に直面すれば救いを求める』
No.5『救い?』
No.1『まぁ良い…今にわかる。早速だがプロトタイプの製作に入る』
No.6『これは前のようにはいかん、転送装置とは違い、人に直接接触しなければならない』
No.1『もちろんだ』
No.6『だとすると、貸せ!』
No.1『何をする!』
凄い勢いで紙に描いていく…
No.6『こうだ!』
No.2『着用型のスーツ?』
No.3『なるほど、着ちまえば動きやすい!』
No.1『フン、着用型のスーツなど考えていたわ』
No.5『こういうのパワードスーツって言うんだぜ』
No.2『漫画の読みすぎだ』
No.5『…』
No.1『ゴーグルをヴィジョンにして、腕に回路を…』
No.2『これはすぐに出来るのか?』
No.1『いや、先ずは腕だけで良い。キャプチャーを作ってPCで実験データを取る、コードネームはドリームキャプチャー!』
No.2『そのままだな…』
No.6『ダサい』
No.4『何かいい名前を!』
No.5『え、え~と…』
No.1『うるさい!名前などどうでもいい!やるぞ!』
ダイスが新しいマシンの製作に入る一方
ダルライザーは次の機会に備えていた
ダル『99…100!…はぁはぁ、きつい…あと2セット!』
(No.1『街を変えようと言うのはわかる…だが貴様には執念が足りんのだ!』)
(母『あんた今、目が死んでるよ、ちゃんと将来考えてるの?何のために働くかわかる?生きるためよ!夢ばかりじゃ食えないのよ!』)
ダル『101!…102!』
(仲間『俺にもそれ着せてくれよ』)
(ダル『ちゃんとトレーニング積んでからなら…』)
ダル『俺は証明する!…167、体現する!168!』
(仲間『すごいな、出来たのか!』)
(仲間『グッズ作ろう!』)
(ダル『いや、それはまだ早いですよ』)
(仲間『なんだそうやってまた自分の意見だけか』)
(ダル『そういうわけじゃ…』)
ダル『まずは信念を伝える!…297!努力せずに生まれる価値などない…298!それを…299!見せるんだ!300!終わった~!はぁ…はぁ、俺の信じる道…』
突き刺さったダイスNo.1の言葉がダルライザーを変える
今までの全てを振り返っていた
(医者『これは治らないんです、通常どんどん進みます』)
(ダル『…好きなことやらせてくれよ…』)
(母『そんな事言わないで、まずは生活の改善だよ!』)
(ダル『…』)
(医者『段々数字が安定してきましたね!』)
(母『ほら!あんたが頑張ればね!』)
(ダル『…俺じゃない母さんのお陰だ…ありがとう』)
(友人『大丈夫か?良くなったのか!マジか!良かった!』)
(祖母『本当に心配したよ、代われるなら代わってやりたかった、良く頑張ったね~』)
ダル『俺の命は生かされた命!だからヒーローを作ろうと思った!諦めなければ何かが変わる!身をもって体感したことを人々に伝え、沢山の人を立ち上がらせる!
…それが
俺の執念に勝る、信念!』
トレーニングの日々は続く
ダイス6人に攻められ、怖くて動けなくなった恐怖を思い出し
それに打ち勝つべく
とある日
ダル『どうした?』
友人『最近何だか寝ても疲れが取れなくて』
友人『俺何て金縛りになったよ、あれって夢見てるのが現実に見えるんだよな!すげー怖くてさ黒ずくめ三人が俺の事見てんだよ!』
友人『マジで!?俺も金縛りなって同じの見た!』
…隣から聞こえる声…
女『…金縛りでさ銀色の…』
ダル『…皆金縛り?しかも黒ずくめ…銀色の顔?』
友人『おい…おい!どうした?』
ダル『あっ!ごめん!』
友人『すごい集中力だな、何を考えてた』
ダル『いや、別に…んじゃそろそろ行くよ!』
友人『あいよ、お疲れ!またな!』
ダル『…ダイス…か?…だとしたら目的は何だ?…ここで引いたら…何のためにこんな事をしてる?コスチュームを着るだけか?…奴等だって人間だ。今、何かが動き出している…調べないと』
街が寝静まった夜…
No.1『やれ…』
No.4『よっ…』
市民『…う、ぎぎ…』
No.2『実験データを取る』
No.1『夢は見ているか?』
No.2『ああ、見てる』
No.1『キャプチャー開始!』
No.2『キャプチャー開始』
…ギュイーーン…プスッ、シューゥゥゥン…
No.2『ダメだ、失敗だ』
市民『は!誰だ!』
No.4『はいよ!』
市民『う…グー』
No.2『その薬は効果的だ、フッ…』
No.1『…行くぞ』
毎晩行う実験は失敗続き
その原因に頭を抱えていた
ダイスのアジト
No.6『フン!やはり無理だ。空想と現実は違うのだ!』
No.1『貴様も言うだけだな、何も出来んくせに』
No.6『何!見せてみろ!貸せ!フン!これが?こうか?』
No.1『クックック…よし…』
No.6『これでダメなら原因は他にある』
No.1『ああ、なぜ今までダメだったのか確信が持てるな』
No.6『フハハハ!貴様の頭の方がと言う意味だ!』
No.1『…証明してやろう、クク。よし!街に出る!』
No.4『どこに?』
No.1『これを見ろ』
No.2『…しらかわSOULフェスティバル!?』
No.3『狂ったか?』
No.1『いや、正気だ。街のイベントだ』
No.6『バカな!人がたくさんいるぞ!』
No.1『だから良いのだ!』
No.6『なっ!?』
No.2『…なるほど、木を隠すには森の中、イベントに現れても、俺達は出演者にしか見えない…だろ?』
No.1『そうだ』
No.4『外でマジックやれば大道芸にしか見えないもんね!スタイリッシュマジシャン』
No.5『おお!確かに!』
No.3『なるほどな…大手をふって実験が出来るって事か?』
No.2『普通は暗躍するものだが、あえて街に溶け込む。街も市民も、まさか自分達が実験台になっているとは誰も思わない』
No.6『だからイベント会場を選んだのか…フハハハ!面白い!』
No.1『行くぞ!街を占拠する!』
ダイス達『了解!』
完
…… ダルライザーショー1stに続く
このプロットは2009年に書き始めたもので当時の時代背景を元に考えていた映像向けの内容です。
アクション俳優を夢見ていた彼はアルバイトでヒーローショーをしていた。
20代後半になり、親の言葉で自分の人生を見つめなおした彼は夢を諦め家業を継ぐため帰郷する。
世は不景気のまっただ中。
不景気の煽りを受けていた家業は親との折り合いがつかずケンカばかり。
ケンカをし、一人になるたび俳優への想いを思い出す程度に未練はあったが、食わねばならなかった。
実は俳優を志す前、教育学部に通い教員免許だけは持っていた。
自分自身の人生を求め、たまたま募集のあった小学校の面接を受け臨時職員として勤務するようになる。
学校にも慣れてきた頃、彼は得意分野を生かし、子供達を喜ばせるため、お祭りで販売されている既製のお面をつけてショーを見せていた。
彼は子供達にとってまさしくヒーローだった。
それに目を付けた校長が彼に、今のご当地ヒーローブームを話し、この小さな市を活性化するためにヒーローを作ったらどうかと持ちかける。
だが彼にとっては今のままで十分だった。
幾月が経ち、彼は密かな異変に気がつき始める。
とても小さなことだが、クラスで夢を発表する際、夢を書けない男の子がいることに気付く。
その子の親は何かにつけて理不尽な事を言ってくる、まさしくモンスターペアレント。
遠足の写真の真ん中にわが子が写っていないだけで、何時間も理由を聞かれる。
世の中は今、夢を追いかけづらい状況で、
夢を書けない子が他にもいるんじゃないかと思った彼は、校長の言葉を思い出し、全ての子供に夢を与えるとの思いで、慣れない手付きでオリジナルのマスクを作り始める。
デザインは市の有名なダルマをモチーフにしたヒーロー。
敵は捨てられたゴミが寄り集まって産まれたゴミ怪人…そんな設定を考えるうちに次第に気分がのって、どんどんと製作を進めている。
その一方、夢の書けない男の子はなぜか、日に日に生気を失っていくようだった。
もしかして家族に何かあるのか?
一刻も早く、その子に見せてあげたいとの思いで作るが、どうしても時間が掛かる。
そんな中、モンスターペアレントの暴風が異常なほどに吹き荒れる。
今まではバンバン叩いて音を鳴らしていただけの机が…
その時はフレームごとひしゃげ、真っ二つになった。
吐く息は荒く、顔は血が上り黒く見えるほど、その形相はまさしくモンスターだった。
校長がどうにかなだめ、事は収まったが、現実とは思えぬ状況がそこにあった。
『なぜあんなに怒らせたのかね?』
『…わかりません。いつも通りでしたが、いつもと違いました…』
しばらくしてヒーローも完成間近、武器も作りトレーニングも積んだ彼のステージデビューの日。
ショーを終えると子供達がたくさん握手や撮影をするために集っていた。
賑わいの中に突然街から叫び声が聞こえる。
悪役の仲間が外でお客を弄って遊んでいるのかと思い控え室から出てみると、仲間が数人飛ばされる光景を目の当たりにする。
大きいとは言えないその体から放たれるパンチは大人を軽く3メートルは飛ばす。
まるで良く出来た演出のショーだ。
だがその顔には見覚えがあった、あのモンスターペアレントだった。
我を忘れるように暴れまわる姿は、ヒーローショーに出てくる異形のゴミ怪人よりも生々しい。
人間に角が生え、血管が浮き出した黒い形相、筋肉も隆々だった。
そのモンスターは子供達の集まる会場に向かっていた。
彼はケンカは強いほうではなかった、強いて言えばアクションのトレーニングだけは怠らなかった所謂普通の彼だが、ヒーローの格好をしているのに子供達の前から逃げ出すことは出来なかった。
あの子の母親なら何とか説得できると思い近寄るが、その重いパンチを体に受けることになる。
身体は宙を飛ぶが、イベント会場には多数のテントがあり、それが彼の身体を受け止める。
軽く頭を打ったものの運良く助かった彼は、また飛ばされても大丈夫なように頭部を守るお手製のマスクをつけ、彼は史上最弱のヒーローに変身する。
説得できないと知った彼は子供達を逃がそうと先回り、幸いモンスターより足は速かった。
避難させようと声を張り上げる中、そのモンスターの子供を見つける。
ヒーローショーを見に来ていた男の子は彼に弱々しく話しかける。
最初に並んでいたのに、いつも突っかかってくるグループによって、後ろの方にさせられていた。
次の回も楽しみに、ようやく座れた席から離れまいとしていたが、主人公はモンスターの目的を察知し、その男の子を連れ出す。
狙いは当たり、モンスターはわが子を追いかけてくる。
人気の少ない場所に誘い出したは良いが、この先の対応なんて考えていなかった。
男の子は目の前の怖いモンスターに怯えていた。
母親とは気がついていないようだ。
男の子を安心させようと、とりあえずポーズを決めて、これはショーなんだと思わせる作戦に出る。
ひたすら男の子を守るために体を張り、ボロボロになる主人公。
子供を前にしているせいか、最初の一発ほどの威力はない。
だが蓄積されたダメージから立ち上がる余力もわずかな時、モンスターが子供に手をかける。
『…まずい!』
と思ったが、モンスターはその子に話しかける
『ドノコガアナタノセキヲウバッタノ?』
『どのコがアナタノ席をウバッタの?』
『どの子があなたの席をうばったの?』
だんだんとモンスターの顔は母親の顔へと戻っていく、男の子はショックで気を失っていた。
頭にはにょっきり生えた角が残っている。
映画みたいだが、今この時がチャンスと思った主人公はその角をお手製の武器で叩き折る。
するとみるみる、黒い血管は引いていき、角は溶けてなくなった。
母親は今までの記憶がすっぽり抜け、何事もなかったかのように子供を抱きながら自分の想いを語り出す。
聞けば、母親は自分の子を愛する気持ちが強かっただけなんだと感じた。
誰だって同じ思いはある。
周りのお母さん友達の中では遠慮がちで我慢するタイプ。せっせと家事をこなし、家に興味も持たない旦那は帰ってきて寝転がるだけ。
こんな生活を変えたいと疲弊していた時、街で知らない人物に声を掛けられたと言う。
黒く覆われた服を着ていて、占い師をしていると言っていた。
男か女かもわからなかったが、話を良く聞いてくれ、今まで溜まっていたものを吐き出せている気がした。
『あなた疲れてますね、この薬を飲むと我慢しなくて済みますよ』
と言われ、優しい言葉に魅かれ購入、服用をしていた。
飲めば気分は大きくなり、強気になり、今まで我慢していた自分を吐き出す事が出来たと言う。
ショーを見るため、子供を友達の所に下ろし、車を駐車場に止め会場に向かう最中、我が子の泣き声を聞いたと思ったら、今子供を抱いていると言っていた。
その話を聞き、母親を変化させた何か得体のしれない原因があると察した彼は、その話を警察に相談する。
あまり信用してもらえず、肩を落とし帰路につく。
謎の黒い占い師。
謎の薬。
そんな事を考えながら歩いていた。
彼の踏みしめた芝生、そこは戦いのあった広場の芝生。
・・・・・
・・・・・角が溶けた場所、闇夜になると黒い花が芽吹き始めていた。
つづく…